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ヘアオイルの弊害

この記事の目次

## オイルケアが引き起こす頭皮トラブルの実態

ヘアオイルはドラッグストアからデパートコスメまで幅広く展開され、SNSでも「艶髪」「しっとり」というキーワードとともに爆発的な人気を誇っている。しかしサロンの現場では、オイルの使いすぎや誤った使い方によるトラブルを訴える顧客が年々増加している実感がある。

最も多い弊害が頭皮への過剰な油分付着だ。ヘアオイルは本来、毛幹部分への使用を前提として設計されている製品がほとんどだが、顧客の多くが根本や頭皮にまで塗布してしまっている。毛穴が油分で塞がれると、皮脂の正常な排出が妨げられ、毛包炎や脂漏性皮膚炎のリスクが高まる。特にスクワランやホホバオイルなどの植物性オイルは酸化しやすく、頭皮に残留した状態で時間が経過すると過酸化脂質として毛母細胞に悪影響を与える可能性がある。

また、毎日のオイル使用によって頭皮のpHバランスが乱れるケースも報告されている。健康な頭皮のpHはおよそ4.5から5.5の弱酸性に保たれているが、オイルの種類や使用量によってはこの均衡が崩れ、常在菌のバランスが変化する。その結果、かゆみやフケ、臭いといった不快症状が慢性化することがある。施術前のカウンセリングで「最近フケが増えた」「頭皮がべたつく」という訴えがあった場合、ホームケアのオイル使用状況を必ず確認する習慣を持つことが重要だ。

さらに見落とされがちな問題として、シャンプーの洗浄力とのミスマッチがある。市販のマイルドシャンプーはオイルリッチな状態の毛髪や頭皮を想定して設計されていないため、十分にオイルを洗い落とせないことがある。蓄積した油分は熱や酸化によって変質し、頭皮環境の悪化を加速させる。

## カラーやパーマ施術への悪影響と技術的リスク

オイルケアの弊害はホームケアにとどまらず、サロンでの施術クオリティにも直接影響する。これはサロンオーナーや施術者が特に意識しなければならないポイントだ。

最大のリスクはカラー剤やパーマ剤の浸透阻害だ。毛髪表面にオイルが厚くコーティングされている状態では、薬剤がキューティクルから浸透しにくくなる。カラーリングでは染着ムラや発色不良が生じ、顧客の仕上がりに対する満足度を著しく下げる。特にブリーチ施術においては、オイル被膜が脱色の均一性を妨げ、リフトアップの差異が斑点状のムラとなって現れることがある。

パーマ施術においても同様の問題が起きる。還元剤の浸透が不均一になることでウェーブのかかり方にばらつきが出やすく、「一部だけかかりが弱い」「時間をおいても形が出ない」という現象につながる。

施術前の診断で毛髪に過度のオイル付着が認められた場合は、炭酸系のシャンプーや、炭酸泉、クレンジングシャンプーや前処理トリートメントで皮膜除去を行って、素髪化してから施術に入ることが技術的な正解だ。

加えて、縮毛矯正やストレートパーマでもオイルの影響は無視できない。アイロン工程での熱伝導が油膜によって変化し、適切な温度でのプレスが難しくなることがある。また施術後の結合が安定しにくくなり、持続性に問題が出るケースも実際に経験した施術者は少なくないはずだ。

カウンセリング時に「毎日オイルをたっぷりつけている」という顧客には、施術前日はオイルを控えてもらうか、当日の施術前処理を通常より丁寧に行うプロセスを組み込むことを標準化すると、施術クオリティの安定につながる。

## 正しいオイルケアを顧客に伝えるカウンセリング術

オイルケアそのものを否定する必要はない。適切な油分補給は毛髪のしなやかさや保護機能を高め、ダメージヘアの質感改善に有効に働く。問題はオイルの種類、使用量、塗布箇所、タイミングのすべてが適切でない使い方にある。プロとしての役割は、顧客に正しい知識を伝え、最適なホームケアをデザインすることだ。

使用量については「少量を毛先中心に」という原則を必ず伝える。毛髪量にもよるが、目安は1円玉大から10円玉大程度だ。根本2センチ以内には塗布しないことを具体的に指導し、頭皮への直接使用を避けるよう丁寧に説明する。顧客の多くは「多いほど効く」と誤解しているため、使いすぎると逆効果になるメカニズムをわかりやすく伝えることが重要だ。

使用タイミングについては、ドライヤー前の濡れた状態での使用と、スタイリング後の乾いた状態での使用では目的が異なることを整理して説明する。前者はヒートプロテクト目的であり揮発性の高い軽めのオイルが向いている。後者は艶出しや保湿目的で、毛髪の状態に合わせてオイルのテクスチャーを選ぶよう誘導することでサロンでの物販提案にもつなげられる。

オイルの種類についても顧客に合わせた提案が必要だ。乾燥毛にはアルガンオイルやモロッカンオイル系の保湿力が高いもの、軟毛や細毛にはさらっとしたシリコン系ブレンドのものが向いており、一律に同じ製品を勧めることは避けるべきだ。毛髪診断を施術に組み込み、その結果をもとにホームケアを提案するサイクルを作ることが、顧客の信頼と来店継続率の両方を高める実践的なアプローチになる。

オイルケアの弊害を正しく理解し、顧客に伝えられる理美容師こそが、今の時代に求められる本物の技術者だ。知識をアップデートし続けることがプロとしての責任であり、差別化の源泉となる。

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